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三人は何も気にせずにレジャーシートに座っているが、俺は未だこの空気の中に入れず、脇に出ている桜の木の根っこに腰を下ろす。
「・・・?入らんの?」
「俺は遠慮しとく」
パンの袋を開けながら言う。
「・・・でも、みんなで食べほうが・・・」
普段はおとなしめの瀬戸口桜(セトグチサクラ)にまで言われるが、
「みんなで食ってるだろ?」
第一入ろうにも定員オーバーだ。これでどう入れと?
そのことに気づいたらしい瀬戸口は、恥ずかしそうにうつむく。
携帯を見ながらパンにかじりつく。
メールは・・・とくにきてないな。べつに誰かに送ったわけでもないから、当たり前といえば当たり前だ。クセで意味もなく見てしまっただけだ。
「・・・ん?」
その携帯の画面に、白っぽいものが落ちてきた。
それを手に取って見てみると。
「・・・花びら?」
何の花びらかわからんが、また季節はずれな。
俺はそれを指ではじき、携帯をしまおうとした瞬間・・・!
一枚、また一枚と花びらが落ちてくる。しだいにそれはもう吹雪といってもいいほどになった。
「・・・んなアホな!?」
さすがに花に詳しくない俺でも、これだけ舞い落ちてくれば、何の花か見当はつく。
俺だけでなく、ここにいる四人全員が思わず上を見上げた。
・・・しかし。
その木は、どう見ても冬の枯れた桜の木だった。桜吹雪も、当然止んでいる。
「・・・なんだ、今の?」
それに返ってくる答えはなかった。
「綺麗だったね~」
という、瀬戸口の場違いな言葉以外は。
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