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「…おいお前黙って聞いてりゃいなんやねんその態度は!誰が助けてやってると思っとんねんゴラァ!」
すると、力也の後ろにいた関西弁の男が、渡辺の態度に憤りを見せ、眉間にシワを寄せながら渡辺に近付く。
そして、渡辺の後ろの壁に手をドンッとついて、睨みつけた。
関西弁の男は茶髪で左耳にはピアスが空いており、世間で言うチャラ男、というやつの部類に入るような男だろうか。
「…やめろ和彦」
すると、その光景を黙って見ていたかなり体格のいい、坊主頭で細目の大きな男が、〝壁ドン〟している和彦と呼ばれた男の腕をとって、引き離した。
「なんやねん武!…力也もなんでわざわざこんなやつ助けんねん!アホすぎてやってられんわ!」
和彦と呼ばれた関西弁の男はそう言うと、体格のいい大きな男の腕を振り払い、腕を組んで後ろを向いてしまった。
どうやら体の大きな男は武という名のようだ。
「…わりぃな武。なあ渡辺、こんなことすんのもういい加減やめてくれ。こんなこと知ったらお前の兄貴悲しむぜ?」
「…ふん、兄さんなんかどうでもいい。知ったような口聞かないでくれ。君だけには助けられる筋合いはないんだよ、力也くん」
渡辺は力也の言葉をそうあしらうと、ズボンについた砂利を手でサッと落とし、大通りへ向かって歩き始めた。
「…なんであんなやつ毎回助けるんだ…力也」
武が険しい顔で力也にそう問いかけた。
「ん?…あ、あぁ、ただの幼馴染ならあれなんだけどさ…悪いな。また今度話すよ、へへっ」
力也は都合が悪そうな顔をしてそう言うと、頭に手を当てて笑った。
「けっ、あいつのこと好きなんか自分。ホモやったんやな」
「ちげぇよ!そんなわけあるか!」
後ろを向いていた和彦がそんな力也を馬鹿にすると、力也が慌てて否定した。
「ま、まあもういいから俺らも行こうぜ!暑すぎてやってらんねえよ、武んちでゲームでも…」
「…おい…ガキ共、ちと待てよゴラァ…」
力也達がその場を立ち去ろうとすると後ろからチンピラの苦しそうな声が3人を呼び止めた。
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