『画策』

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「某もあまりよく見ていないゆえ、確かなことは申せないのですが、あれは盗賊の残党ではないかと…」 「…じゃあその謀反起こす相手の、大殿の仕いとかいうやつかもしれねえってことか?」 力也は困惑した表情を浮かべる十兵衛に鋭く小さな声で問いかけた。 「…その場合もあり得えるかと。や、しかし仮にそうであったとしても、この話が外に漏れることはあり得ないゆえ、深く考えることではないと…」 十兵衛は少し不安そうな表情を残したままそう言うと、小さく頷いた。 「…そっか。じゃああんまり気にしないでおくわ…」 「…そうしていただきたい。それと、明日は朝も早いゆえ、お二方はここに泊まっていってくだされ」 十兵衛は雲行き怪しい不吉な話から切り替えるよう二人にそう言った。 これから先の見えない運命の流れに飛び込んでいく二人が背負う大きな期待は、力也が抱く不安とは裏腹にどんどん膨れ上がっていく。 早く元の世界に帰らなければならないという焦る気持ちと、翌日に控える有事に向けて抱く恐怖心が力也に大きく振りかかるのであった。
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