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フィルムの現像を終え、乾燥の為にネガをぶら下げて二人は酢酸の臭いのする暗室から飛び出した。
でも、その場所から早く離れたかったのは、酢酸の臭いからだけではなく、現像作業中に狭い暗室の中、慎吉の息が達彦の首筋や耳たぶに掛かるのがたまらなく、理性を保つのがやっとで、妄想と幻覚の世界の扉の前で右往左往していたからだ。
『ネガ乾いたら下焼きしよう。それまで時間があるから、パネル貼りをサクサクッと終わらせようぜ。』
『先輩の手際の良さは、本当に勉強になります。』
『誉めたって何も出やしないぜ。
それとも、またチュウしようか…』
ヤバい!
つい…いつもの軽口の調子で…
とんでもない事を口走ってしまった。
慎吉は、頬を赤らめながら言った。
『ダメですよ先輩。
まだ仕事が残ってます。』
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