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『先輩。遅くなりました。』
夢中になって下焼きのキャビネ版の写真を見つめる達彦は、おもむろに顔を上げ、満面の笑みで慎吉を迎えた。
『ありがとう。』
二人は一枚の写真を見つめ、現像方法の打ち合わせをした。
『印画紙はコントラストを淡くしたいんで2号を使う事にしたんだ。
この部分の背景を強調するように覆い焼きして…』
達彦の説明に慎吉は頬を赤らめながら聞き、達彦の手伝いが出来る事を心から嬉しいと思っていた。
『…という事で頼んだよ。
デベ(現像液)と定着液は作ってあるから、もう一度温度の確認してから作業に取り掛かろう。』
二人は狭い暗室に入って行った。
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