暗室にて

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達彦は手際良くネガフィルムを引き伸ばし機にセットした。 『慎ちゃん、デベの温度は?』 『はい、20度です。』 『OK。印画紙出すからセイフティライトに切り合えるね。』 狭い部屋が薄赤いほのかな色に染まる。 ツンと鼻に付く酸っぱい臭いと共に。 『露出をF8に抑えたから10秒一発勝負だ! 行くよ!』 『はい!』 半切の大きい印画紙に映像が映し出される。 打ち合わせ通りに事が進み、10秒が経過して、暗室は再び薄赤いほのかな色になった。 印画紙を現像液に浸けると20秒程でくっきり画像が浮かぶのが見れた。 『先輩、二分経ちました。』 画像の浮かび上がった印画紙を、暗室の酸っぱい臭いの元凶である定着液に浸け、印画紙の未現像の感光部分を溶解した。 『よし、水洗いしよう。 電気点けてくれ。』 暗室の中に光が戻り二人の目を眩ませた。 そして、ポリタンクに廃液を移すと、酸っぱい臭いの暗室から解放された。 『先輩って、本当に手際良いっすね。』 『いやあ、学校で現像出来るまでは、家の風呂を目張りして風呂の蓋の上でやってたからね(笑)』 慎吉のキラキラした尊敬する視線に達也は、はにかみながら答えた。 水洗いを終えた写真を洗濯バサミで理科準備室にぶら下げ乾燥した。 『出来映えは上々じゃん。慎吉ありがとう。』 『良い写真っすね、先輩。 美術展で入賞しますよ!』 『慎吉。俺、こういう風景写真も好きだけど、最近もっと撮りたい写真があるんだ。』 『どんな写真っすか?』 『ポートレート』
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