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『理科室に出よう。』
午後の日差しは更に傾き、茜色に染まる理科室。
達彦は、F=1.4 50mmレンズの絞りを開放にして、慎吉の自然な笑顔を数枚撮影した。
純粋に澄んだ目
達彦を信頼しきって安心して微笑む表情
達彦の芸術的欲求は更に暴走を始めた。
『慎吉!お願いだ!
上半身だけで良いんで脱いでくれ!』
普段の慎吉ならば、冗談として笑い飛ばすだろう。
しかし、レンズ越しに突き刺さる熱い視線、連続するシャッター音で魔法にでも掛かったようにシャツを脱ぎ捨てた。
細いんだけど筋肉が付きかけた青年期少し前の初々しい肉体が、茜色の夕日を浴びて鮮やかなコントラストを生み出す。
慎吉は、レンズを通して体中を舐め回される快感を初めて覚えた。
達彦は、目の前の美しい光景をフィルムに焼き付けようと必死であった。
慎吉も、達彦の要求に応えるよう必死でポーズを取った。
やがて、太陽は西の山脈の中に吸い込まれ消えてしまった。
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