七月七日 (3)

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──運が良い。 僕は昔からそう言われる事が多かった。 友人達と共にイタズラした時もそうだ、友人達だけが怒られて、僕は怒られなかった。 “運が良い” なんてよく言われる。 なのに、この状況はなんなのだろうか? 僕の前にはたくさんの兵士…それも敵兵だ。 前だけじゃない。 右、左、後ろ、周りは全て敵だらけ、周りの味方は動かない。“運良く”僕だけが生き残った。 「…」 増援は期待できそうに無い。 左手に握った相棒を見る。 美しく、繊細で力強いソレは、共に幾度の死線をくぐり、一度も期待を裏切らなかった。 聖剣『エクスカリバー』。 抜き放った者には神に等しい力を授けるという剣。 ただ、伝説と違うのは装飾の施された宝剣ではなく、機能美だけを注ぎ込んだような無骨な長剣だということだけだ。 …敵の一人が襲い掛かってきた。 さっきまで考え込んでいて、反応できなかった。 …まずい、やられる…! 殆ど無意識に頭をかばって… …ちょうどその時だった。 黒い髪に黒い服、右腕に鎖を巻いた何者かが僕の前に降りてきたのは。
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