七月八日 ~プロローグ~

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──ここがどこだかが分からない だが、どういう場所かは知っている… 一言で表すなら、『牢屋』。 …こちらの都合を考えず、自分の都合で喚び出しては好き勝手に使役して、また牢屋に繋ぐ。 …それが、召喚師。 …一度喚び出されれば否応なしに繋がれる、そんな召喚師を、私は嫌っていた。 ──何故あの時? …召喚は時と場所を選ばない。最適なモノがあればそれを問答無用で引き寄せる。 …そのせいで─ ──私の“封印”を解いてくれた最愛のあの方に、感謝する事すら出来なかった。 …私が見たのはほんのわずか… 黒い服  黒い髪   鋭い瞳 そしてあろうことか、私を戒めていた封具(ほうぐ)を自ら使役している。 …次に会えたら、絶対に傍を離れないと誓う。 「…お姉ちゃん、暗いよ…」 「ゴメンね、私のせいで…」 「お姉ちゃんのせいじゃないよ。悪いのはお姉ちゃんを欲しがる悪い人だから」 …妹にまでこんな苦しみを強いる召喚師を私は許せない。 「…あのお兄ちゃんだったら、きっとこんな事はしないのに」 「…そうね。」 …もう一度だけでも会いたい…あの黒い彼に…
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