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「起きろ馬鹿親父!!今日は葬式だろう?」
朝、息子の希望に起こされた。
「うっせぇな」
俺はそう言ってベッドから起き上がる。
今日は親戚の葬式だ。
少しだけ気分が重い。
朝飯を作る希望に「制服着とけよ」とだけ告げて俺は喪服に着替える。
黒いスーツ。
これを着るのはもう何度目だろうか?
人の死はやはり悲しい。
最初にこの服を着たのは俺の最愛の人が死んだ日。
希望という息子を残し25歳で死んだ。
俺の最愛の人。
希望は当時、5歳位でそして俺と希望は親子だと知らなかった。
最愛の人―涼子がそれを隠していた。
琉衣という男と涼子は結婚していた。
まぁ色々な事情があって俺の子供を2人で育ててくれた。
涼子が死に希望が15歳の時、俺も希望も真実を知った。
勿論最初は戸惑った。
だが嬉しさもあったし。
多分一番戸惑ったのは希望だろう。
俺の事を親父と呼んでくれるようになった時は俺も嬉しかった。
一緒に暮らし始めてもう何年も経ったが結構楽しい。
希望は今年で高校を卒業する。
秋にはもう18歳だ。
そう思うとやっぱり息子の成長を見れて良かった。
それが例え数年でも。
俺の最愛の彼女もどこかで笑ってくれているだろう。
「親父~早く飯食えって!!」
不意に希望の声が聞こえて俺は慌てて朝食を口にした。
「で?沙遊姉は来るの?」
「姉貴は仕事があるからな・・・来ないだろう」
希望の言う沙遊姉とは俺の双子の姉貴である。
ちなみに希望を育ててくれた希望のもう一人の父の名は立野琉衣だ。
今は宮瀬希望だが、ほんの少し前まで立野希望だった。
「仕事か・・・でも明後日は皆して仕事休むんでしょう?俺だけ学校行くとか嫌だな」
希望がぼやいた。
明後日は、最愛の彼女だった相沢涼子の命日だ。
「仕方ないだろう?お前今年で卒業だから休ませる訳には行かないし。どうせ墓参りなんて毎週お前は行ってるだろうが。」
「でも・・・母さんの命日位は行きたいよ。今日が土曜で明後日が月曜ってのが納得いかない」
子供じみた事を言いながら眉間に皺を寄せる息子に俺は苦笑した。
「明日、じいちゃんが連れてってくれるんじゃないのか?」
「じゃぁ今日も大阪に泊まっていいの?」
「葬式の場所が大阪だしな」
「やったぁ!」
「・・・ほら支度しろ。そろそろ行くぞ」
俺はそう言って朝食を全て平らげて台所へと向かった。
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