5人が本棚に入れています
本棚に追加
希望が起きる前に俺は既に家を出た。
自販機で煙草を買って、そのままいつもの場所にいく。
いつも・・・
涼子と待ち合わせをしていた場所。
レンタルショップの裏。
駐車場になっていて、しかもあまり人も通らない。
屋根もあるし。
そこでいつも涼子と話をしていた。
馬鹿な話ばっかりで・・・
だけど楽しくて・・・
煙草を一本取り出し火をつける。
そして煙を肺一杯に吸い込み、吐き出した。
「・・・・まだ6時半か・・・」
やっぱり早過ぎる・・・
「砂那君!ここに居たんだ」
声が聞こえた。
「なんでお前が居るんだよここに」
「ほら、幸せな思い出の残像に僕も入ってたじゃない」
「俺の思い出を汚すな!」
爽やかに笑う男は眼鏡を少し上げた。
「久々だね。希望は元気?」
立野琉衣、希望の父親だった男。
そして涼子の旦那だった男。
俺から涼子を奪い、俺に涼子の最期をくれた男。
「琉衣」
「何?」
「お前さ~変な夢見なかった?」
気になって聞いた。
琉衣が此処に居る事。
何故か偶然とは思えなかった。
「あぁ~変な夢か・・・きのこが襲ってきた夢ならみたよ」
「きのこに何したんだよお前は・・・」
琉衣の冗談に呆れた俺。
だけど、何故か2人とも笑みが漏れた。
「砂那君・・・涼子が戻ってきたらどうする?」
不意に問われた事。
同時に悟った。
あぁ、こいつも夢を見たんだ。
涼子の夢を。
「オカルトかよ」
「違うよ」
顔を見合わせ苦笑した。
不可能。
だけどもしも現れたなら・・
それが幽霊だとしても夢だとしても嬉しい事。
「告白する」
「僕も~」
「「ざけんなよ」」
俺達は暫らくずっと笑っていた。
だから涙が頬を伝う感覚はきっと気のせいだ。
最初のコメントを投稿しよう!