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キミはそのはじにあるベンチで海を眺めるのが好きだった。
海水浴をした浜辺。
クラゲに刺されて大騒ぎしてた。
釣りをした堤防。
「僕が海に落ちて帰ったよね。」
彼女の前でびしょ濡れはださかった。
水族館。
子供の様にイルカのぬいぐるみを欲しがってたっけ。
車は思い出の地を進みながらも停まることはなかった。
窓を開ける。
春の心地よい風と潮の匂いが車内に入り込んでくる。
二人のお気に入りの音楽を流しながら、車は進んでいく。
夕方になるころ僕はそこに着いた。
「ここかな?キミの見たかった海。」
今日初めて車を停めた。
そこは地元では有名な温泉街だった。
そこには二人で夕日が海に沈む所を見ると幸せになれるという伝説があるのだった。
去年の今頃二人はここで夕日を見たのだった。
「今日も綺麗だなぁ。」
今日もそこには素晴らしい夕日の海が広がっていた。
確かに僕らは幸福だった。
愛し合ったまま終わりを迎えられたのだから…
「ありがとう…」
キミの声が聞こえた気がした。
また来年の春にキミの魂と海に来よう。
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