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完全にとまではいかないが、熱が下がり、全身打撲の痛みが引いてきたのは、あれから一週間後のことだった。
「山崎くーん……」
「……なんや……」
「こっちおいでー」
「いやや」
「かっ、かわゆい……っ!」
「……(ああもう副長はよう来て!)」
山崎の願いが届いたのか、襖が開き、顔怖いを含めた男たちが入ってきた。
「やあ、久しぶり。体の具合はどうかな?」
……きっと、この人が一番偉い人なんだろう。
そう思い、正座はまだ出来ないから、布団に両手をついて頭を下げた。
「おかげ様で、良くなりました。こんな得体も知れないものを拾ってくださって、看病までして頂き、本当に感謝しています。」
「いやあそんなそんな!良く出来た子じゃないか!なっ、トシ!」
孤児院育ちにとって、生きるために、世渡り術は必須だ。どんな相手に対してでも、いい人だと思わせなければならない。
幼いながらにそんなことを考えていた私は、演技力というものが上がっていたらしい。
だから、百回もの嘘を、今まで誰も見抜くことはできなかった。
……いや、初めのは、違う。だから、九十九回だ。
「ん、どうした?もう顔を上げてくれていいんだよ?」
いつまでも顔を上げない私を不審に思ったのか、男たちが私の周りの布団を囲んだ。
一回目のこと、思い出しちゃった……。やばい、泣きそう……。
顔を上げれない私の元に、懐かしい、
『彼』の匂いがした。
驚いて顔を上げ、その匂いがする人の袖を掴んだ。
「しょ……っ!……た……じゃない……。」
私に袖を捕まれた人は、驚いて私を見た。
「……なんだ?おめェ、泣いてんのか……?」
やだ。顔怖いだったし。
彼の匂いがするその人は、顔怖いだった。
でも、今は少し焦った顔をしている。
あ、私が泣いてるからか。
大丈夫。こんなん、すぐ泣き止める。
だって、私は嘘つき女だもん。
ゴシゴシと目を擦り、平然と掴んでいた袖を離した。
「すみません。目、乾いちゃって。」
「ああ、それならいいんだが……。」
私がさっき話した一番偉い人は、安心したように言ったが、この私の隣にいる顔怖いは、いつの間にか顔怖いDXに進化したようだ。
……ってか、今気づいた。
人多っ。
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