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車が、山道へと入ったところで、異変に気づく。
「……泊めてくれるんじゃなかったの……?」
「んー?俺ら、車で生活してんだよね。だから、外でいーい?」
車の中を見渡しても、生活用品なんて、どこにもない。散らかったお菓子の袋があるだけだ。
…………ミスった……
こいつらは、駄目だ。
最初から捨てる気だったんだ。
「……降ろして。」
「え~、何今さら。もう着くし。」
濡れたままの服の上から、男が腕を掴んだ。
全身に、虫が這ったような寒気が襲う。
「…………」
背中には、車のドア。上手くいけば、飛び出して逃げれるかもしれない。
「……くしゅんっ」
―――――今だ!
腕を掴んでいた男がくしゃみをしたスキに、腕を振り払い、ドアに手を掛け、勢いよく飛び出した。
「あっ!馬鹿!そこ崖っ……」
男の焦った声が、遠くなっていく。
体には、浮遊感。
あ……落ちてるんだ……
神は、私を見捨てたんじゃない。
私のことが、嫌いなんだ。
叩きつけられた衝撃で、目の前は真っ暗になった。
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