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「美和も颯くんに返事するんだよ?」
「…わ、わかってるから」
美和は照れくさそうにそう告げるが、真琴は軍団の中をまた遠目に見送っていた。
それから、その年の12月ー。
真琴は偶々漣に接触する機会があった。
「あれ?
確か、島崎真琴さん?」
「あっ…
花咲先輩!
先輩も読書ですか?」
「うん?
島崎さんも読書?」
「あ、私図書委員でして?
兼、読書みたいな感じです」
「ふぅん?」
漣は意外そうに頷くと、真琴はキョトンとした顔をしていた。
「花咲先輩、ボタン取れそうですよ?
付けましょうか?」
「え?
あ、本当だ」
漣はブレザーを脱ぐと、素直に差し出したので真琴はフッと微笑んで受け取る。
「花咲先輩、避難ですか?」
「ん?
何が避難?」
「女子集団から避難してきたんでしょ?
図書室は私語厳禁になっていますし…
違ったらすいません」
「…ううん?
違ってないよ」
「人気者は大変ですね?」
「別に人気者になりたい訳じゃなかったんだけど、生徒会長引き受けたら何か自然とこんな日常になってしまったんだ…」
「つまり、嫌なんですね?」
「まあ、ちょっと息苦しい感じなだけ」
「…じゃあ、息抜きしにきてください?
ここならあんまり軍団の方はこないですし?」
「…いいのか?」
「だって、先輩は読書もしていますし?
不自然ではありませんから」
真琴がそう告げると、漣はホッとしたのかフッと微笑んで頷いた。
「出来ましたよ、花咲先輩」
「あ、ありがとう?
島崎さん器用なんだな」
「ふふっ
意外とこんなのは得意だったりします」
「料理とかも?」
「あ、はい?
得意分野ですけど…
あ、これ…」
「ん?」
「クッキーなんですけど、食べますか?」
「…いいのか?」
「あ…
甘いの苦手でしたら無理しないでくださいね?」
「嫌、食べてみていい?」
「はい、どうぞ?」
真琴はクッキーの包みを差し出すと、漣は一枚取るとパクっと食べていた。
「ん、美味い」
「本当ですか?」
「うん?
また俺に作ってくれる?」
漣のそんなお願いに真琴は一瞬戸惑ったが、フッと微笑んで頷いた。
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