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「にゃー…?」
未だにこちらを見つめ続けるその天敵に、思わず身構える。
また、笑いを堪えるような声が聞こえた。
「…退け、猫」
「…」
「そこから、退くんだ、猫」
頼むから。
いやほんとマジにお願いしますって。
俺の同僚の方にいってくれよ。せめて。
「…」
「…」
「にゃー…」
「…そこから、おりて、あっちいけ」
猫と俺のにらみ合いは続く。
端から見たら相当滑稽に違いない。
魂を刈り取り、管理する天下の死神様が猫相手に半ば本気だとは。
とはいえ、駄目なものはしょうがない。
弱点なんて誰にでもあるんだ。多分。
「…にゃぁ」
その一言(一鳴?)でケリはついた。
そいつは静かに俺の寝床から降りると、音も立てずに出ていった。
「はぁー助かった…」
『いちいち大袈裟だな柩よ』
「うっせーよ弥生…はーしんどかった」
全身で大きく息をつくと、その場に崩れ落ちた。
胡桃がお疲れさまだのなんだのいってきた。
言うくらいならやるな。
頼むから俺の寿命を縮めないでくれ。
人に比べたらそりゃ長いとはいえ。
「やっぱり猫なんか大っ嫌いだ…」
情けないと、どっちかがため息をついたのがわかった。
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