ある青年の譲歩と懇願

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今、俺は、困っていた。 実に、困っていた。 なぜか椅子にくくりつけられて動けないし、 そんな自分の前では、鏡の前に座った黒髪の女の子。 鏡に向かってヒソヒソと話しかけ、時折こちらを見遣る。 なんだっていうんだ、一体。 「あの、姫…」 「うるさいわよ」 (名前を呼んだだけで…) 呼び掛けただけで不愉快そうに顔をしかめられた。 相変わらず、対応がひどいと言うか、慣れてしまったのがいささか悲しくもあるが。 「ええ、聞いてるわ…、…で、……」 またしても鏡に向かって話しかける(通称)姫。 彼女のために言っておくと、別に頭がおかしいとかそういうわけではない。 彼女が話しかけている鏡には、なんと彼女と瓜二つの少女が映っているのだ。
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