未来戦争(仮)

１

どんよりと低く垂れ込めた雲が空一面を覆い尽くし、湿った生ぬるい風が智香の頬を撫でる。

（雨、降りそうだな…）

空を見上げる智香の左頬にポタリ、と滴が落ちる。

すぐに雨はどしゃ降りとなり、辺りを灰色の世界へと塗り替える。

智香は近くの公園にあった、コンクリートで作ったお椀をひっくり返したような遊具の中に潜り込んだ。

中は意外と広く、乾燥していて過ごしやすかった。

智香はそっと目をつぶり、周囲の音に耳を澄ませた。

道路や建物に打ち付ける激しい雨の音、遠くから響いてくる雷鳴、小走りで近づいてくる足音―――

智香が目を開けると、入口から中を覗き込んでいる一人の少女と目があった。

歳は智香と同じくらいだろうか。