さようなら

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「なんだ?喧嘩でもしたのかよ」 大学の同僚が興味本位で聞いてくる 「えぇ。」 「ふうん?彼女泣きそうだったけど別れたのか?」 「ふふ。彼女に酷い事言っていいのは僕だけですから」 「怖っ…鎖神も可哀想だな」 「そうそう。」 相手の肩に僕は手をのせる 「楓に何かちょっかいだそうと思わないのが身のためですよ?」 目を細めて相手を睨み付ける 「わ、わかった!わかってるから!」 顔を痛みで歪ませミシミシ言っている手を離させようとする 「ならいいんですよ」 手を離してその場から僕は去った 「大学で鎖神に手を出そうと思う奴はいねぇよ…死にたくないからな」 捕まれた肩を抑えながら男は呟いた これは鎖神本人は知らないであろう話だが 入学してまもないころの話 水無月はそれはもう鎖神に対しては溺愛はすごいものだった 水無月の見た目は女と言われても納得できるように可愛らしいので最初は姉妹かと思われていた だが 一度鎖神に告白しようとした男子生徒が 病院送りになったのだ その男子はただ一言鎖神には手を出さないほうがいいと それだけを怯えたように言っていたらしい 鎖神本人が何かしたのかとはじめは疑われていたが 水無月本人が鎖神に好意を寄せる人物を次々に牽制していたのだ 華奢な身体つきからは予想も出来ないほどに彼は力が強い だから病院送りにしたのは水無月だと大学では有名である
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