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「代償は――…
依頼者の死です」
部屋が静寂に包まれる。
予想はしていたがやはり―…
「それは…私が死ぬ、って事ですよね…」
良江の表情に遠夜は僅かながら驚嘆した。
普通の人間ならば自分が「死ぬ」等と言われれば錯乱し動揺するものだが…。
良江の顔に迷いはなかった。
それが何よりも彼女の強い決意の表れである事は明白だ。
その様子に遠夜は薄く微笑み話を続けた。
「正確に申し上げますと…
最後の死に方を…標的と同じ死に方にするんです」
「…それは…どういう…?」
「例えば、私が標的を紐で絞殺するとしましょうか。そうしたら、依頼者も最後は紐で絞殺される…
と、言う事になるんです。
すぐにと言う訳ではありません。
その人が生きられる寿命まで…」
気の長い話だが…人の寿命なんて誰にもわからない。
つまり―…
いつ死ぬ時が来て…どんな死に方をするか…それをずっと思いながら生きていく事になる。
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