標的・篠宮 祐一

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男の言葉に満足したのか影は微かに揺れている。 『ヨロシ、イノデスヨ。ワタシ、ハソノ、カワリノダイショ、ウヲイタダイテ、イマスカラ』 そして、影が一際大きく揺れるとその中から異様な形をした者が現れる。 その者は年の頃は40代半ばで背にコウモリの翼を持ち、鋭い猟犬の牙を生やしていた。 『シカシ…コンカ、イハ、ショウショ、テコズルヤモシレ、マセンナ』 異形の者はその鋭い牙の為か人間の言葉を発音しにくいようだ。 その異形の者の言葉に男は軽く眉を寄せる。 「あぁ…あの女か…。 あの女…何者なんだ?…全く隙がなかった…」 男の言葉に異形の者は面白そうに笑っていた。 『アノ、ムスメハ…フクシュウ二捕ラワレ… 堕天使二魅入ラレタ者 人ニアッテ人ニアラズ』 「堕天使に魅入られた者?」 堕天使に魅入られたとはどういう事だろうか。 しかし、それこそが遠夜を含め復讐代行屋に身を置く者達が背負う悲しい業である。 『コレイジョ、ウハ、ワタシ、タチノモンダイデニンゲンのアナタ、ニハカンケイ、ナイコト』
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