£海£

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1月31日。日本はまだ風に乗ってわずかに春の香がするだけで、コートを脱ぐには早すぎる時だ。 「愛ちゃん♪お誕生日おめでとう☆」 決して僕には向けない笑顔で父親は愛に言った。 僕と5才下の弟は黙っていた。 ふいに父親が僕たちを見た。 「あのなぁ、可愛い娘の誕生日にグァムで誕生会をやってやる。ママの誕生日も一流ホテルでディナーをとる。これがステイタスってもんだ。愛もママも幸せ者だ」 僕は母の顔がニコニコしているが、目が笑っていないことに気づいていた。 そしてその理由も…なんとなく感じていた。
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