£海£

6/9
前へ
/52ページ
次へ
それをつけてメーカーの宣伝するわけだから、あまり下手ではなれないよな… もう10年も前のライダーマークをつけて海に入る。 父は自慢気だが、僕にはさっぱり理解できなかった。 上手な人がつけるマークをつけて、腹の出たおじさんが「ライダーだ!!」と注目を浴びながら大して上手くなく波に乗るんだよ? 今朝も起きると父はもうホテルには居なかった。 壁に立て掛けてあったサーフボードと浴室にあったウェットスーツがない。 あぁ、これで夕方まで恐怖に怯える必要はなさそうだ。 二才の娘、五才の息子、十一才とはいえ、まだ何の役にもたたない僕を連れて、いくらグアムとはいえ、ホテルを出てあちこち彷徨く勇気は母にはなかった。 「真海(まさみ)、プール行こう!」 僕は弟を誘い、ホテルのプールに行くことにした。 「ママ、行って来るね! 一時間くらいしたら戻るから、そうしたら朝御飯行こうね!」 母は嬉しそうに笑い 「気を付けてね。真海、お兄ちゃんの言うこときいてね♪」 と手を振った。 元気にしてなきゃ。 左手の甲には大きな絆創膏を貼ってある。 痛くなんかないよ。 あんなこと、なんでもないよ。 直接その言葉を言うより、元気に笑っている方が母は安心する。 かわいそうなママ、いつか僕はあなたを護れる大人になるからね…
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加