音の記憶 4

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男が楽器やら楽譜を たたむ間、僕は彼の シルエットをぼんやり 見ていた。 開演前から感じてい たのだが、どうもアン バランスな雰囲気が 漂う。 なぜだろう・・・ 「おまたせしました」 「おつかれさまです」 「遠慮なくごちそう  になりますね」 「強引にお誘いして、  ご都合は大丈夫  でしたか?」 「えぇ、イイんですよ。  待ってる人なんて  いませんから」 中年男ふたり。 駅前のベンチで ワンカップ。 ・・ちょっと 異様な光景だろう。 「ボウイング、キレイ  ですね^^まっすぐだ」 ・・・あえて演奏自体 の評価は避けた^^; 「バイオリンなさる  んですか?」 「えぇ、ちょっとだけ」 「いやいや、お恥ずか  しいです」 ぽつりぽつり、男は 身の上話しを始め た。 半年前に、はじめて バイオリンを触った こと。 師事は仰がず、我流 で練習していること。 どうしても、さっきの 曲を弾いてみたかっ たこと。 なかなか努力家のようだ。
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