凡才の幻想入り

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「それにしても……」 和真は辺りを見回すが、周りに広がる光景はとても非現実的である。 暗闇が無限に広がる空間に、至る角度から和真を見据える無数の瞳……これは確実に、現実では有り得ない。 「……そうか、夢か」 和真はそう決め込んで自分の顔を平手打ちするも、見える景色は変わらない。 「どうなってんだよ、これ……」 「夢じゃないわよ」 和真の耳に再びさっきの声が聞こえ、和真は背後を振り返る。 紫色のドレスを着た、長く美しい金色の髪……頭には赤いリボンがついた白い帽子を乗せ、白い傘を右手に持っている女性がいる。 整った顔立ちの女性は怪しい笑みを浮かべながら、和真の臑を傘で叩く。 「っ……何すんだよ」 「ほら、夢じゃないでしょ」 「ってかお前は誰だ、ここはどこだ、俺はどうなったんだ」 「質問が多いわねぇ、大声出さなくても答えるわよ」 女性はそう答えると傘を引き、どこからか取り出した扇子で口元を隠しながら笑う。 「まず私は八雲紫、境界を操る妖怪よ。そしてここはすきまの中、私の力で開いた空間の狭間と言える場所ね」 「めちゃくちゃだな……ってか、妖怪?」 「そう、妖怪よ……貴方は自分を幻想として見ていて、あの世界に貴方は自分の居場所を見出せなかった、だから私が呼んだのよ」 「ちょっと待て、話が理解できないぞ?」 「当たり前よ、私は非常識の世界から来たんだもの」 相変わらず紫は笑みを浮かべているが、和真には紫など全く目に入っていない。 『状況が理解できねえ、妖怪だと?……とんでもないことになっちまった』
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