凡才の幻想入り

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「そんなわけで、貴方の世界の常識は私には通用しない……貴方を呼んだ理由は、貴方を楽園に招待するためよ」 「楽園……というと、違う世界か?」 「常識と非常識の境界で隔てられてるから、ある意味で別世界ね……貴方から見れば」 紫は話を続けるが、実際和真は会話の半分の意味も理解できていない。 紫の言う常識と非常識の境界、それにより世界から隔絶された楽園……和真からすれば、ファンタジーの域である。 「まるでファンタジーだな」 「そう、幻想の世界よ……貴方の世界の言葉で言えば、ファンタジーの世界かしら?」 「まだ半信半疑だけどな」 「あら、この空間と私を見てもまだ信じられない?」 「はぁ……いいよ、腹括るから」 どうせ現実世界に未練は無いし、帰りたいとは思わない。 毎日が暇な日常の繰り返しで、充実しない毎日……ならば、幻想として生きるのも悪くない。 「よし、決めたぞ」 「あら、決心したの?」 「俺はその楽園で生きる」 「言うと思ったわ……なら招待しましょう、幻想郷へ」 「幻想郷?」 「そう、幻想郷……忘れ去られた幻想が集まる楽園よ」 紫はそう言って扇子を閉じて横に振り、そこに空間の裂け目……すきまと呼ばれるそれを開く。 「幻想郷は全てを受け入れる、ようこそ幻想郷へ……この八雲紫が、貴方を楽園に招待するわ」 紫は和真の手を引き、すきまに放り込む。 「うわっ」 「私の名前を出せば、大概の者は良くしてくれるはずだから……じゃあ、頑張ってね♪」 「ちょっ、説明不足だぞおおぉ!」 和真は開かれたすきまの中に消えていき、紫の隣には九本の尾を持ち、特徴的な帽子を被っている女性……八雲藍が現れる。 「いいんですか、紫様……何故あのような所に?」 「決まってるじゃない、面白そうだからよ」 「まぁ、そうですよね……紫様なら、そう言うと思いましたよ」 藍は呆れたように溜め息をつき、紫はやはり笑みを浮かべていた。
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