能力

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「確かに幽香が本気になったら、里は確実に大きな被害を受ける……この人里に犯人がいないならば、誤解を晴らさねばならないな」 「だったら、真犯人を見つけるのはどうだ?」 「本来なら別に構わないが、私はこれだからな……妹紅も竹林の案内人としての仕事がある、お前一人で解決できる問題ではない」 和真の提案を聞くと、慧音は自らの傷を指差しながら言う。 真犯人を見つけると言っても、見つからずに問題が解決しなければ幽香の矛先はこちらに向きかねない。 確かに話に聞いただけでも、幽香は普通では手に負えない怪物並の強さを持つ存在だということは、和真も理解していた。 「そうだった。誰かいないのか、情報収集が得意な奴とか……」 「基本的に、鴉天狗は自分達のため以外には動かないと考えてもいいからな。あとは鬼がいるが……まあ、神出鬼没な奴だから会えるかすらわからないぞ」 「私も力になります、共に真犯人を探しましょう」 「じゃあ、あと一人くらい協力者を探すか。俺は幽香さんを説得しに行くから、白蓮さんは協力者と犯人探しをよろしく」 「わかりました、では私は協力者を探してきます。必ず犯人は見つけるので、それまで無事でいてくださいね」 白蓮は全身に強大な魔力を纏い、姿を見失うほどの速さで瞬時に飛び去る。 和真は幽香のいるであろう太陽の畑に向かおうとするが、慧音に腕を掴まれる。 「馬鹿っ、なんでわざわざ危険な方を引き受けたんだ!お前の実力で太刀打ちできる相手じゃない、下手をすれば殺されるぞ……なんで感情に任せて突発的に行動する、死にたいのか!?」 「慧音さん、一刻も早く幽香さんを説得しないと、犠牲は増えるだけだと思う。それは人里だけの問題じゃない……彼女が無関係の人や妖怪を襲うとは思わないけど、それだって早く解決するに越したことはないだろ?」 「確かにそうだが、大きな問題になるようなら紫や霊夢だって動くはずだ。お前が焦って動くだけ、寿命が縮むだけだぞ?」 「……それでも、俺は早く解決したいんだ。悩んでいるのはこっちだけじゃない、幽香さんだって大切な花を傷つけられたんだ」 和真がそう言うと、慧音も何かを悟ったように和真の腕を離す。 「わかったよ、絶対に死ぬなよ」 「了解、慧音さんもしっかり休めよ」 慧音はよろめきながら自宅へ向かい、和真は幽香のもとへ向かった。
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