EE法

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 物質の組成をコード化し、そのコードを使ってあらゆる元素から同じ物質を再構成する。当初はネット通販などで流布し始めたこの技術は、ある種の風俗サービスへの広がりを見せ(非合法ながら、こういった市場が新技術を吸収し、うまく応用するパワーにはどんな時代だって目を見張るものがある)、ついには医療の世界に利用されつつある。  そして、人間の身体と心もまた、ついにコード化され保管することができるようになった。もちろん、技術の濫用を防ぐために、さまざまな法制がととのえられ、ようやく制限つきながら、実際の応用が合法化されたのだ。  それは、難病の患者が、治療法が見つかるまで一時的に冷凍睡眠によってその人生を文字通り凍結する「生体一時退避」の分野で、まず合法化された。最大の理由は、冷凍睡眠法が、どうしてもある種の危険――組織の破壊や劣化というリスクをはらんでいるのに比べて、この手法がより安全で確実だとみなされたからだ。  もっとも、彼のように、たいした病でないようなケースでも、本人の意向によっては特別許可を得ることもできる。問題視されてはいるが、いずれにせよ金と力がモノを言うのは、いつの時代でも同じことだ。
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