1‐1:始まりはいつも突然に

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「はい☆いらっしゃいっ!焼き鳥二本ねっ?……おまちっ♪」 ごく自然に笑顔で焼き鳥串二本を差し出すおじさんと、焼き鳥を受け取る矢川とを見て俺はためらった。  ¨食い逃げ¨ そんな単語が頭の中を横切っていく。 いくら元魔王とはいえ、悪事を働くにしちゃあそれはいくらなんでも三流な行動じゃ御座いませんか?アローリーバ殿っ?! 「……お、俺は……まだ悪事に手を染めるつもりわ……」 伝説の勇者が、元魔王様と仲良く食い逃げして伝説を間違ったモノに書き換える……これほど涙がちょちょぎれそうな情けない展開は無い。 「……?どしたの?ひとみちゃん?」 不思議そうな顔をしながら、矢川はポケットから今じゃあ誰も使ってないようなカエルの形をした蝦蟇口(がまぐち)財布を取り出した。 「400B(ブロンズ)になります♪」 「ハイハイ☆」 …………極、し~ぜ~ん~に、蝦蟇口から銅貨を出して、矢川はおじさんに代金を支払った。 「はい。瞳ちゃんも食べるだろ?」 呆気にとられた顔をしながら、矢川からそれを受け取った俺……。 ……よ……良かったぁ……(*安堵のためいき*)
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