1‐1:始まりはいつも突然に

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「あはははは♪食い逃げなんて、いくら僕が元魔王だってそんな事はしないよぉ~」 街角のベンチに二人仲良く腰掛け一息入れた。 俺の話を聞いた矢川が高らかに笑う。 「……いや、悪い。だってさぁ……まさかお前がこの世界の通貨をもっているなんて考えないだろ?正直焦ったぜ~…?」 焼き鳥だけではなく、ちゃっかり皮のコップに入ったトロピカルジュースまで買ってくれた矢川をありがたく思いながら、俺は焼き鳥を頬張った。……旨い! 「これは僕が魔王だった時、フェルディさんが用意してくれたんだ。いくら魔王だからって、一文無しで外に出すのは格好つかないからって」 ……そうかぁ~…流石はフェルディさんだ。  けど、魔王様に蝦蟇口の……しかもカエルの形をした財布を手渡したセンスは今ひとつかも?(笑) 「……世界の覇王になる方が、他人から物を横奪するなんてセコい事はしちゃいけませんってね」 ……悪いが、バルディオスはかなりセコかったぞ?(苦笑) そう思いつつも、俺はこの蝦蟇口からお金を出して買い物をするバルディオスを想像して思わず吹き出してしまった。
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