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「あなた、誰?」
凛としたその声に、思わずドキッとしてしまった。
彼女が不思議そうにこっちを見ている。
多分答えを待っているのだろう。
「僕は……流星」
「ねぇ、家出?」
僕の答えにはふれず、違う質問をしてきた。
彼女は視線をそらして立ちあがった。
猫が膝から飛びおりて、彼女の足元にぴったりとくっつく。
「どうだろうね……」
僕も目を合わせないようにして適当にながす。
本当のことを言ったからって、どうにかなるわけではないのだから。
「帰る家はある?ご飯は食べた?寝る場所はある?」
彼女の声には心配の色は含まれていなかった。
ただの事実の確認なんだろう。
さっきから質問ばかりだ。
また僕の答えにはふれない。
しかも、僕が家出した奴だと勝手に決めつけてるらしい。
間違ってはいないが、なんだか不愉快だった。
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