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「へ…変じゃありませんか…?」
準備をすると言って部屋を出て一時間もしない内にサティが帰ってきた
サティは右手を自分の首のうしろに回し、上目づかいをしながらも恥ずかしそうに尋ねてきた
私は一瞬手に持った紙の束を床にぶちまけそうになったけれど、すんでのところで留まった
……腰にも届いてた長髪が無くなっていた…
「なっ…えぇっ、サティどうしたの?!失恋?…そ、それとも勇者になれって言われたのが嫌で…?!」
正直、自分が何を言っているのかほとんどわかならい状態だった
そんな私を見ながらサティは小さく笑っていた
「嫌ですねぇ、サザメさん、別にリストカットしたとかじゃないんですからそんなに大騒ぎしなくたって」
…相変わらず恐ろしいことをあっさりと言う子だ
恐らく…というか間違いなくボスの影響なのだろう
「勇者は…男の人しかなれないんでしょう? だから、少しでも男に見えるように髪を切って来ただけですよ」
ちょっと気が早いですけどね、と照れ笑いする彼女を見ていると、罪悪感が一気に押し寄せてきた
なんかもうサティの顔を直視出来なかった
サティが……サティが…!!
何だろう、私も加害者側なんだけど…このやる瀬なさは
「まだ選考会にすら行ってないんですけどね…」
どうしよう…なんかマルチ商法に自分の母親まで引っかけちゃった気分だわ
「私なんかじゃ力不足でしょうが、それでも精一杯頑張って来ますから」
…いや!!むしろ我が子を町へ売り飛ばす感じだ…!!…
……やっぱりこのままなし崩しにする訳には…
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