売られてゆく仔牛

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「あの子は大丈夫よ。幼い頃からスパイのいろはを仕込んできたんだから。力も知識もその辺の勇者希望者が敵う筈もないわ…何せ私の娘よ?」 …返す言葉も無かった というかこの人が断言してしまうと、どんな夢物語であろうと一気に現実味を帯びてくるのだ 「ただいま帰りました」 サティの声……まるで謀ったようなタイミングだ 部屋の扉が開く音がしたけど、心の準備が出来ず、振り返れないでいた 「合格…だそうです」 視線を感じたのでとにかく振り向き、笑顔を作った 「おめでとう」 その言葉に対してサティは深いお辞儀で返して来た …こんな言葉を言う為に一日中待っていた訳ではなかったが…それしか思い付かなかった そんな私をニヤニヤしながら見ているボスの視線に気付いたが、何だか心が読まれているみたいで居心地が悪かった 早くこの場を立ち去ろう…そう思って一歩踏み出した途端、ボスが口を開いた 「さて、書類も片付いたし、サティの準備もしないとね。私はちょっと用事あるから、サザメちゃん後よろしくね」 そう言い終わるや否や、ボスは颯爽と部屋から出ていってしまった
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