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小高い山の頂上付近に、黒一色で彩られたゴシック調の古城がそびえ立っている
夜になれば周りの闇に飲み込まれ、姿を確認することすら出来なくなりそうな漆黒
そして、細部にまで施されたレリーフが威厳と不気味さの両方を醸し出していた
城の内部は大理石や敷石で敷き詰められている。見渡す限り白と灰色の二色のみで構成されており、飾り気がない
廊下に出ると、木製の扉が等間隔にならんでいた
その中で1つだけ、白銀で龍のレリーフが彩られた扉がある
一際目立つその扉の前に、1人の青年が立っている
年齢にして10代後半程、髪は緑掛かった金髪。眼鏡の奥に深緑の瞳が鋭く光っている
彼は扉を軽く叩いた
「どうぞ」
中から男性の声が聞こえる
「…今日は魔王様お一人ですか」
先程の青年が部屋の中に入り、男性に話しかけた
部屋は薄暗く、閉められたカーテンの間から漏れている光で辛うじて人の陰を確認出来る程度であった
魔王と呼ばれた男は静かに振り返りながら口を開いた
「また地震だな…」
「…はい。魔王様、ご無事なようで何よりです」
青年は恭しく頭を垂れた
「無事…でも無いかもな」
「…どうかなされましたか?」
深刻な様子に胸騒ぎを感じ、頭を上げて魔王を見つめたが、逆光でシルエットしかわからない
「度重なる地震で…とうとう結界が破られた」
「…結界……?」
何の話か見当も付かなかった
「まぁいい。地震に関してはこの通り問題ない。下がっていいぞ」
いつもと何か違う……そう思いながら青年は部屋を後にした
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