売られてゆく仔牛

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「勇者…募集……ですか」 突き出された新聞を受け取り、サザメは怪訝そうな顔をしながら新聞とボスの顔を交互に見た ……本気の顔だな 久々に楽しそうなボスの顔を見ても、嫌な予感しかしなかった 「慈善事業でも始める気ですか?」 もちろんそんな筈ないのはわかっていた この組織は、表向きこそ「印刷企業」で通っているが、実態は陰の諜報組織…要するに「スパイ」に似た仕事を主として行っている 最近では「雇われスパイ」…要するに探偵紛いの仕事がメインになりつつある ボスの最終目標は「王政の廃止」らしく、この国の乗っ取りも視野の内だそうだ …とんでもない人だけど、もし合法的に王に立候補出来るような状況になれば一票入れるくらいの義理はある…かな この組織の制度はよくわからないけど、どうやら有志を募っているだけらしく、忠誠を強いられたことはない というより、このボスに忠義をつくすのはカルト宗教に嵌まるようなものだ 何が言いたいかというと、それだけとんでもない人なのだ、この人は… 性格にこそ問題はあるけれど、何をやらせても卒なくこなしてしまう ついでのように始めた印刷業もいつの間にやら上々である ……彼女がある種の天才であるということは恐らく間違いないだろう
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