売られてゆく仔牛

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恐らく、勇者募集という言葉に食らい付いたのも、国外への無期限パスポートを得る為だろう この国は基本的に出入りを禁じているから、それなりの身分でなくては出国すらままならない おまけに「王様からの信頼」という特典付きなのだからこの人が見逃す筈がないのだ 「我が社から勇者が出たら何でもやりたい放題よ!!」 正義の「せ」の字も感じられないおおよそ予想通りの回答が返ってきた 「今どき勇者だなんて恥ずかしい仕事を率先してやる馬鹿なんてそう居ないわよ!!だから、私たちの会社から立候補者を出せば簡単に通るって寸法よ!」 そう言ってボスは私に10枚程の紙の束を押し付けて来た その紙全てに「勇者募集」という文字が鮮やかな朱色印字されていた 朱色の中でも発色の良いものは確かに目を引くけれど、最高級の品物だ そう簡単に使えるものではないのだけれど… お金や資材というものはいつの時代も必要ない人の元へ集まるもののようだ こんな人が(カモフラージュとはいえ)会社を立ち上げ、更に成功させてしまうのだから世も末だ …とにかく私は逆らうことも出来ずに、チラシを会社中に貼りに行った
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