売られてゆく仔牛

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しかし、どんなに宣伝しようとも、いまどき勇者なんてやりたがる人間なんてこの会社に居るはずがない むしろそんな事をやりたがる様なボスと同系統の人は私が直々に面接の時点で落としていた 勇者をやる人なんて出て来る訳がない…それがボスの1番の誤算だ そうやって気持ちを持ち直そうと試みつつ、ボスの居る部屋をノックした この部屋は私とボスを除いたら後2、3人しか出入りを許されていない 表向きの「印刷業」とは完璧に分けているので、ここにも一般社員は入れないようにしている ボスの返答も聞かないまま部屋に入り、後ろ手に扉を閉めた 「…ボス、何ですかあれは」 私は顔を伏せたまま、半ば呆れて聞いた …顔を上げて目を合わせたら怒鳴り散らしてしまいそうだった 「す、すいませんサザメさん。私があの貼り紙貼ったんですけど…レイアウトがいけなかったでしょうか?」 ボスとは違った少女のあわてふためくような声―――… …しまった その声の主が誰かなんて考えなくてもわかった …そして、私は自分の甘さを痛感することになる
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