プロローグ

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――15年前、ルアド地方の名も無い小さな村にて 名も無い村の入り口で先端に赤い宝石を埋め込んだ杖を持ち、黒いローブを纏い、立派な髭を顎にたくわえた老人が立っている……いや、立ち尽くしている。 「なんということだ……」 そう呟いた老人の目の前にはおぞましいほどの惨劇の跡。 辺りでは家が燃え、ヒトや家畜の死体が数え切れないほど地面に横たわっている。 まさに地獄絵図。 そして、地面にはヒトのものとは思えない形状の足跡が無数に。 おそらく、魔物の群れに襲われてしまったのだろうと老人は考える。 常人が見れば間違い無く精神に異常をきたしてしまいかねない惨状を目の当たりにした老人はしばらくその場で動けずにいたが、 「イカン!こうしておる場合ではない!」 自身を叱咤するように声を張り上げ、その後に老人が何かブツブツと短く呟くと、その瞬間に持っている杖の宝石が光り、村の中だけに雨を降らせた。 突如降り出した雨は瞬く間に村で燃えていた火を消していく。 雨は火を消すとすぐに止み、老人は先程とは違う言葉をブツブツと呟き、杖の宝石をまた光らせてから、それを明かりにして村の中へ進んで行った。 どこかに生存者がいることを強く願いながら。 .
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