3437人が本棚に入れています
本棚に追加
―――――――――
――――――
―――
「ハァ、ハァ、ハァ」
老人は村中をひたすら探し回る。
切らした息を整える事も、額から伝う汗を拭う事すらも構わずに。
探し始めてどれだけ経ったのかは全くわからないが、いつの間にか空は白みかかっている。
それでも生存者は1人も見つかりはしない。
あまりに残酷な現実に老人はまたもその場に立ち尽くし、自身に突きつけられた現実を前に絶望するしかない。
ローブは汗を吸って重力を増し、息は切れ切れで咳すらこみ上げて来る程だ。
一晩中村を1人で捜索し続けたのだから無理もない。
体力的にも精神的にも老人は限界だった。
そんな時、
「────!───ア!」
ヒトか家畜か建材なのかすら判別のつかない何かが、先ほどの雨で消し切れなかった炎によりメラメラと燃える音、火や雨で脆くなった建物が崩壊する音、それだけしか聞き取らなかった自身の耳がここに来て初めて、生物の声を捕まえる。
.
最初のコメントを投稿しよう!