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老人は自身の耳を一切疑う事無く、ただひたすら声のする方へと進んでゆく。
老体を引きずりながら行き着いた先には、今にも崩落を始めそうな半壊した平屋の家屋があった。
その入り口の辺りでは2人の男の死体が見るも無惨な姿で横たわっている。
1人は体中傷だらけで、食いちぎられたような跡が首の辺りに見られ、もう1人は右足以外の四肢がそこには存在せず、唯一無傷であった顔にはこの世にある全ての恨み辛みを味わったかのような苦悶が刻まれていた。
これで生きているはずが無い。
「────!────!」
老人の希望を繋ぎ止めた声は確かにこの家屋から聞こえてくる。
老人は死体に視線を極力向けないようにしながら急いで屋内に足を踏み入れると、
「……ウッ!」
老人は視界に入った光景に、一時、こみ上げる吐き気を抑える事となってしまう。
そこには無惨に食い荒らされた肉片や骨、破られた衣服が転がっていた。
かつては生き物の一部であったソレは人なのか家畜のものなのか判別がつかない程の有り様だ。
喉まで上がって来たモノを無理矢理飲み込み、リビングであろう部屋の奥に入った老人は不自然に積み上げられたガレキや家具の残骸を発見する。
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