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「夜深さん遅いですねー」
空紅がいるのはとても小さな公園。滑り台と鉄棒とブランコと砂場がぎゅっと詰まったような広場だ。そこのベンチに座って夜深を待つこと小一時間。時間感覚があまりないために、近くの時計を確認し続ける。
時計が指す時間は浅の十時。ほどよい感じに日が照ってきた。
--明るいのは嫌いなんですけどね。だから、夜深さんに早く来て貰えないと、
「干からびてしまいます」
「干からびるのか?」
艶やかな黒の短髪と同色の澄んだ瞳(め)。そして、彼とは違う白いマントに虫網のような網を持っている。男とも女ともとれる中性的な男。そして、煙草が似合う無精髭を生やした男――それが夜深に対する印象だった。
急に現れたものだから驚いて死にそうになった空紅。それを夜深に告げると、
「君はもう死んでいるだろ」
とすかさず返ってくる。遅れておいて頭だけは切れる。何か腹立つな、と胸中で毒づいた。
「それで、夜深さん。俺を一時間待たせて何かないんですか」
言葉遣いなんてまるっきり無視する部下だ。自分でもよく思う。
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