1・死神と少女

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『君の名前は空紅(からくれない)。分かった?』 『分かりましたー』  そんな緩い会話が交わされた一ヶ月前を、空紅はふと思い出す。自分は死神で名前は空紅。本当の名前は、死神になるときに記憶が全て消されたらしい。ゆえに、死んだ理由も彼は知らなかった。  --知りたくもないからいいですけど。  そんなことを思いながら欠伸を一つ。今分かっていることと言えば、自分自身の容姿とその他諸々。長い銀髪で、切れ長の黒目(め)をしているという事実。それに、黒いマントに身を包んで、死神の大鎌〈デスサイズ〉で、魂を狩る。理解しているのはそれくらいだろうか。  --どうでもよかったりしますけど。  その理由は空紅が、生前残してきた未練を果たすために死神になったからだ。未練を果たさないと、自称上司の命神〈イノチノカミ〉、夜深(よみ)が昇天するのだ。そうすると、自分が命神〈イノチノカミ〉になってしまうので、それは避けたいと思っている。
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