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愛銃を持つ手に力が入る。力を入れすぎたため爪にひびが入ったが、それさえも気にならないほど俺は混乱している。
そうさ、混乱してるんだ! だから幻聴なんて聞こえるんだ。初めて戦場に駆り出されたルーキーじゃあるまいし、幾つもの修羅場を潜り抜けた俺が混乱しているなんて……………………恐怖しているなんて!
どのくらい走り続けたのだろう? 空は白みはじめ、森の中にうっすらと靄が立ちこめてきた。俺はそれでも走り続けた。息が切れても、足がおぼつかなくても、体が鉛のように重くなっても。
山肌に朝日がかかるようになった頃、俺の目の前に小さな洞窟が見えた。俺は身体に鞭を打ち、最後の力を振り絞って洞窟の中に入った。
そこは縦長の洞窟のようで、入り口こそ大人一人が入れるほど小さかったが、中は冷えきった空気が溜まっていて奥は暗闇で閉ざされている。
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