第4章

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キスをしてくれるんだと思って待っていたら、違ったらしい。 何かカサカサ音がする。 左手を握られて、何かをはめ込まれた。 「さあ、巴。目を開けて」 目を開けて左手を見ると、左手の薬指に、シンプルな銀色のリングが輝いていた。 「クリスマスプレゼントです。…まあ、自分のも買ってしまったんですけど」 いたずらっぽく笑った樹の手の中には、僕のと同じ、シルバーのリング。 「ね、巴。はめてくれませんか?」 そう言って、それを僕に差し出す。 僕はそれを受け取って、樹の左手の薬指にそっとはめた。 樹は、それはそれは本当に幸せそうに笑うと、キスをしてくれた。 「…本当は、束縛するのは嫌なんです。でも…あなたを離したくないんです。僕がちゃんと守るから、ずっと側にいてくれませんか」 …これって、プロポーズみたい。 自然と涙が溢れてきた。 「…ありがとう、樹。僕はずっと君の側にいる。だから、君もずっと僕の側にいて」 樹は僕を抱き締めてくれた。 「ありがとうございます。プロポーズ成功ですね。…本物は18歳になったら、一緒に買いに行きましょう。これは安物ですので」 僕は、樹の腕の中で何度もうなずいた。
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