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少し傾いた日の光が美術室にさし込む。
絵の具で汚れたままの水道に、うっすらと外の景色が映っていた。
どこにでもある普通の県立高校の、どこにでもある普通の美術部。
そこにどこにでもいる普通の男子高校生の俺が所属している。
この美術部には、数週間前から続きを描かれることもなく、少しクリーム色した布をかけられたまま置き去りにされている一枚の油絵がある。
中身は誰も知らない。
誰もその絵が描かれているところを見たことが無いし、作者に封印されてからは、誰もその絵に触れようとしないからだ。
当の作者は「絶対に絵は見ちゃダメだからね」と、何とも無責任な言葉を残して、数週間前から体調不良で入院中。
部長でもある彼女の留守中、副部長の俺はこうして毎日一番に部室に来ては、先輩の絵を眺め、布を取り去りたい衝動と必死に戦っている。
「詩織先輩……」
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