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「あたしが本当に好きなら、ここでキスしてよ!」
(我ながら、イイ考え!
古い恋愛ドラマも、観とくもんだなぁ)
これは、逆説。
本当に好きなら、あたしのことを想うなら
こんな真っ昼間の住宅地で、キス出来るはずはない。
仕方無しのやらされゲームなら、罪悪感で、キス出来ない。
そこまで悪い男では、なさそうだし。
(キスしようとしたら、チャラ男決定!
ぶん殴って、阻止しちゃう!)
かくして、あたしのファーストキッスも、守られると言うわけ。
(うーん、小悪魔っ!
……なんか、イイ女っぽくない?)
時おり、小さい子の泣き声が、風に乗ってやってくる。
他に、誰も通らない。
ますます、顔がこわばる田中くん。
(別に、田中くんはクラスメートでいいんだけどさ……
いいんだけどね……
……いいんだ…け…ど……)
気がつくと、あたしの自転車を脇に停めて
田中くんが、あたしの肩をつかんでいた。
「ふ、風亜を……好きなんだっ」
肩が痛い。
見とれるくらいイイ男ってわけじゃないのに
あたしの両目は、ガッチリ釘付け。
動けない。
(……う…そ……わぁ……)
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