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田中くんの顔が、少しずつ近づいてくる。
(人間の顔って、案外デカいんだ……
……じゃなくってぇっ!)
自分の体が、思い通りにならない。
張り倒して蹴りまくって逃げる予定だったのに……
(あ、田中くん、ヒゲ生えてるんだ……)
現実逃避している場合じゃない。
(あーあ、初めてのキスなのになぁ……)
あたしは、諦めて目を閉じた。
何となく、頭の中で、奈緒のツッコム声がした気がした。
「風亜って、アホだよね!
自分のこと、まるっきりわかってない」
(うん、アホだ……)
肩が、ますます痛い。
あろうことか、鼻息がかかる。
(イチゴ味かな?レモン味かな?……キス)
パアアアァッッ!
背後で、盛大にクラクションが鳴った。
目を開けると、巨大化した田中くんの顔面。
バッチリ目が合って
二人とも、慌てて飛びすさる。
「風亜!」
「マ……ママッ!」
寄りによって!なぜか!最悪のタイミングで!
通りかかったのは、ウチの車!
(ママに……ママに、み、見られたぁっ!)
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