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不思議な感じ!
(ガッコ、行きたくないよぉ……)
次の朝。
トボトボ歩いて登校して
中学の駐輪場に寄ると……
ちゃんと、あたしの黄色い自転車が置いてある。
鍵は、もちろんキチンと掛けられていて……
(田中くんとこに、取りに行かなきゃ!)
春空を鏡のようにクッキリ映す、校舎の窓。
見上げたあたしは、ため息、一つ。
(……嫌だなぁ)
キス強奪未遂の田中くんその人が、どうこうじゃない。
きっと、みんなに囲まれて、冷やかされて、質問責めだから。
制服の胸ポケットに入れた携帯電話が、やけに重い。
昨日から、電源は切りっぱなし。
「ふぅあぁ!遅い!」
(奈緒?!)
いつも遅刻ギリギリの奈緒が、駐輪場まで駆けてくる。
「こらっ!風亜のバカ!
昨日っから、音信不通でさ!
ボケッとして、ユルユルのグダグダなんだから
田中に捕って喰われたのかと思ったじゃん!」
(喰われ……まあ、未遂で終わったけど)
「えへ、ありがと!
奈緒、心配して迎えにきてくれたんだ」
奈緒の口はストレートだけれど、中身は密かにスイートだ。
制服に飛びついたあたしを、鬱陶しそうに手で払っても。
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