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「そっか!おめでと!
キスまでしちゃって、このこのぉ!
田中くんねぇ……ま、お似合いじゃん」
まだ、何にも言っていないのに
月ちゃんは、勝手に一人で納得して、盛り上がっている。
(わあん、今まであたしが噂話した人たち、ごめんなさいっ!)
心の中で、いたく反省。
あたしも、こんな風に、他人の恋を大騒ぎして楽しんでいた。
月ちゃんを、責められないし、憎めない。
……けれど……
「やめて、月ちゃん!
田中くんと、別に、付き合ってないからっ!」
「……へっ?!
だって、クラス中で、噂持ちきりだよ!
またまたぁー、照れるなって!」
「本当だってば!
田中くんなんて、別にイイオトコじゃないし、好きじゃないもん!」
「……相田……」
廊下の空気が、ピキッと凍った。
いつの間にか……本当にいつの間にか
あたしの背後に、田中くんが立っていて……
その手には、あたしの自転車の鍵。
「……コレ……」
(今の、聞かれた?!)
能面みたいな、彼の顔。
あたしの手に、鍵を押し込む。
クルッと反転して、どこかにダッと走り去ってしまう。
(……田中くん……)
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