31人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
(……どうしよう……)
絶対、彼を傷つけた。
女の趣味は、イマイチ理解出来ないけれど
あたしを好きなのは、本気だと思う。
(なのに、あたしってば……冷酷非道だ……)
「風亜っ!追いかけなっ!」
月ちゃんだけでなく、クラスの娘の何人かが
あたしの背を、一斉にポンと押した。
「うん!」
あたしは、アテもなく校舎の中を走り出す。
(いないよぉ!どこ?)
陸上部の足に、鈍足のあたしが追いつくはずもなくて……
「田中くん、見なかった?」
「田中?どの田中?」
顔見知りとすれ違うたびに、聞いて回る。
(田中……下の名前、わかんないし!)
「えっと、フツウの田中くん!」
「はぁ?」
「いいや!ごめん」
結局、また、探しに走る。
軽快な校内放送が、朝のショートホームルーム開始を知らせる。
(もう!どこ行ったの?)
ドラマなら、授業をサボって屋上って感じだろうけれど……
屋上に出入り可能なほど、管理の甘い学校じゃない。
(それに、サボるなんて、とんでもない!)
保護者に、即連絡がいく。
これ以上、ママにうるさく言われるなんて、耐えられない。
最初のコメントを投稿しよう!